アメリカで犬との州間移動に新ルール|43州が健康確認を強化した理由

アメリカで犬との州間移動に新ルール|43州が健康確認を強化した理由

アメリカで今、犬を連れて州をまたいで移動するときのルールが相次いで厳しくなっています。

背景にあるのは、「New World Screwworm(新世界ラセンウジバエ)」と呼ばれる寄生性のハエです。

2026年6月3日、アメリカ農務省(USDA)はテキサス州で国内初となる感染を確認しました。その後、テキサス州やニューメキシコ州で感染例が確認され、8月18日時点でAmerican Kennel Club(AKC)は46件の確認例があると報告しています。

これを受け、各州が犬を含む動物の移動ルールを強化。AKCの8月の規制情報では、43州の農業・公衆衛生当局が、州をまたぐ動物の移動について新たな健康確認や証明を求める緊急ルールを導入したとしています。

つまり今のアメリカでは、犬との旅行で「ホテルは犬OKか」「飛行機に乗れるか」だけでなく、出発地・通過する州・目的地それぞれの動物移動ルールを確認する必要が出てきています。


New World Screwwormとは?

New World Screwwormは、温血動物に寄生するハエの一種です。

問題になるのは成虫そのものではなく、その幼虫です。

傷口などに産み付けられた卵から幼虫がふ化すると、生きている動物の組織に入り込み、組織を食べながら成長します。

牛や馬などの家畜だけでなく、

  • 野生動物

  • まれに人

にも影響する可能性があります。

感染すると、傷の悪化や強い痛み、感染症などにつながり、発見や治療が遅れれば重症化することもあります。

2026年6月には、ニューメキシコ州に住む犬でも感染が確認されました。

そのため、今回の問題は畜産業だけの話ではなく、犬と暮らす人にも直接関係するものになっています。


なぜ「犬の移動」が問題になるのか

New World Screwwormの拡大を防ぐうえで、各州が警戒しているのが動物の移動です。

感染地域にいた犬が別の州へ移動した場合、傷口などに幼虫がいることに気づかないまま、新しい地域へ持ち込まれる可能性があります。

特にアメリカでは、

  • 愛犬との旅行

  • ドッグショー

  • スポーツ競技

  • ブリーダーによる移動

  • 保護犬の州間輸送

など、犬が州境を越えて移動するケースが珍しくありません。

そのため、犬を含む温血動物の移動そのものを止めるのではなく、移動前に獣医師が確認し、感染の兆候がないことを証明する方向でルールが作られています。


43州でルール強化。ただし内容は州ごとに違う

ここが今回のニュースで最も重要なポイントです。

アメリカ全土で統一された1つのルールが導入されたわけではありません。

各州がそれぞれ独自の条件を設定しています。

そのため、同じ犬を連れて旅行する場合でも、目的地によって必要な手続きが変わります。

アラバマ州

感染地域から入る温血動物について、獣医師による検査とCertificate of Veterinary Inspection(CVI:獣医健康証明書)を要求。

感染がないことを証明する記載や、条件によっては事前の入州許可、予防的な処置なども必要になります。

コロラド州

感染地域から犬を連れて入る場合、移動前の獣医師による検査に加え、傷の確認や必要に応じた処置、州への事前連絡などが求められています。

メリーランド州

テキサス州とニューメキシコ州から入る犬について、移動前72時間以内に発行された健康証明書を要求しています。

そこには、犬がNew World Screwwormに感染した傷を持っていないことを獣医師が確認した旨を記載する必要があります。

フロリダ州

感染地域から入る動物について、獣医師による検査・健康証明・必要な処置などを要求しています。

さらに保護施設やレスキュー団体による犬・猫の移動には、より厳しい制限が設けられているケースもあります。

このように、州によって条件はかなり異なります。


「目的地」だけ確認すればいいわけではない

AKCが犬の飼い主に特に注意を呼びかけているのが、この点です。

犬と州間移動をする場合、

1. 出発する州
2. 移動途中で通過する州
3. 目的地の州
4. 帰宅時に再び通る州

それぞれのルールを確認する必要があります。

たとえばテキサスから車で複数州を通って旅行する場合、目的地だけではなく、途中の州にも独自の条件が設定されている可能性があります。

日本で犬と県境を越える感覚とは、かなり違います。


犬との旅行前に確認したいこと

今回のような状況では、犬と旅行する前に次の点を確認しておく必要があります。

① 最新の感染地域

New World Screwwormの感染地域や監視地域は状況によって変化します。

USDAは専用サイトで感染状況を更新しています。

② 各州の入州条件

通常の狂犬病証明などとは別に、New World Screwwormに関する追加条件が設定されている場合があります。

③ CVIが必要か

州によっては獣医師による健康診断とCVIが必要です。

さらに「移動前72時間」「5日以内」など、証明書の有効期間も異なります。

④ 傷がないか

New World Screwwormは傷口から感染することが多いため、皮膚や傷の確認も重要です。

⑤ 帰り道の条件

旅行中にルールが変更される可能性もあります。

出発時だけでなく、帰宅時にも最新情報を確認する必要があります。


アメリカでは犬との旅も「制度」を確認する時代に

犬と旅行するとき、これまでは

ホテル。

飛行機。

レンタカー。

ドッグラン。

犬同伴可能なレストラン。

といった情報を調べることが中心でした。

しかし今回のNew World Screwwormの問題では、そこに「動物の健康と移動規制」という新しい要素が加わっています。

犬との暮らしが社会の中に広がるほど、犬の移動も人間だけの旅行とは違ったルールの影響を受けます。

特にアメリカのように州ごとに制度が異なる国では、犬と旅をすることは、犬同伴施設を探すだけではなく、その地域の動物衛生ルールまで確認することにつながっています。

今回の規制は感染症への緊急対応ですが、世界で犬と暮らすということを考えるうえでも興味深い事例です。

Brott JOURNALではこれからも、世界各地で変化している犬との旅行、街、制度、暮らしについて紹介していきます。

 

参考文献・出典

U.S. Department of Agriculture, Animal and Plant Health Inspection Service
“Confirmed Detections of New World Screwworm”

American Kennel Club
“New World Screwworm—Updates on Interstate Travel Requirements with Dogs”

American Kennel Club
“Regulatory Update August 2026”

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