三本脚の犬は、どうやって走る?研究が捉えた独自の足運び

三本脚の犬は、どうやって走る?研究が捉えた独自の足運び

三本脚の犬は、残った脚が地面につく順番やタイミングを変えながら、体を前へ運んでいます。2026年に発表された研究では、速く進むときには三拍のリズムで走り、ゆっくり進むときには前後の脚を別々のテンポで動かす犬がいることが分かりました。

散歩中や動画で、三本脚の犬が軽快に走る姿を見たことはありませんか。どのようにバランスを取っているのか、気になった方もいるでしょう。今回の研究は、その動きを一歩ずつ調べ、三本脚ならではの足運びを明らかにしたものです。


12頭の犬の動きを、一歩ずつ調べる

研究を行ったのは、英国の王立獣医大学(RVC)などのチームです。解析の対象になったのは、前脚を一本失った犬6頭と、後脚を一本失った犬6頭。すでに三本脚で暮らしている犬と飼い主が研究に参加し、実験室の通路をさまざまな速さで移動しました。

研究チームは、立体的に動きを記録するモーションキャプチャーと、床にかかる力を測る装置を使いました。どの脚がいつ着地し、どのくらい地面に接しているのか。体を支える力が、それぞれの脚にどう分かれるのか。目で見ただけでは追いにくい動きを、時間と力のデータとして捉えています。

犬たちが歩いたのは、長さ約10メートルの通路です。何度か行き来する中から、まっすぐ、一定の速さで進んだ部分を分析しました。途中で立ち止まったり向きを変えたりした動きを混ぜずに比べることで、速さと足運びの関係を調べやすくしています。装置で記録するだけでなく、どの場面を比較するかも研究の大切な部分です。

参加した犬は1〜12歳で、ゴールデンレトリーバーやドーベルマン、サルーキ、ミックス犬などが含まれていました。年齢や体格を記録したうえで、前脚を失った犬と後脚を失った犬、それぞれの動きを見ていきます。移動は、飼い主が確認した普段の活動の範囲で行われました。


速く走るときは「三拍のリズム」

私たちも、ゆっくり歩くときと走るときでは、足の使い方が変わります。四本脚の犬も、速さに応じて歩き方を切り替えます。そこで研究者が注目したのは、三本脚の犬にも、速さに対応した特徴的な移動のパターンがあるかという点でした。

速く進むときに見られたのは、「ギャロップ」に似た走り方です。ギャロップは、犬や馬が速く走るときの足運びの一つ。今回の犬たちは、三本の脚が順番に地面につく、三拍のパターンを繰り返していました。脚の着地の順番には、前脚を失った犬と後脚を失った犬で違いもありました。

速い移動では、三本の脚の動きが共通の周期にまとまっていました。一本の脚が着地し、次に同じ脚が着地するまでを一周期とすると、その間にほかの二本もそれぞれ着地します。三本全体で、一つの繰り返しを作っているわけです。


ゆっくり進むときは、前後でテンポが変わる

さらに興味深かったのが、ゆっくり進むときです。研究では大きく二つの方法が見られました。一つは、速いときと同じ脚の順番を保ちながら、地面に接している時間などを長くする方法。もう一つは、前後の脚を違うテンポで動かす方法でした。

後者では、二本残っている側の脚が左右交互に歩く一方、一本だけの側の脚は、それより速いテンポで地面につきます。たとえば前脚が一本の犬では、右の後脚が着地してから、次に同じ脚が着地するまでの間に、一本の前脚が複数回着地することがありました。後脚二本が歩く動きと、残った前脚が小刻みに着地する動きが組み合わさるのです。

これは、前後の脚がいつも同じ回数だけ動くと思っていると、少し意外な結果です。左右交互に進む二本組と、こまめに地面へ戻る一本の脚。それぞれの動きが重なって、一頭の犬の移動を成り立たせていました。

研究者は、一本しかない側の脚が、地面を離れていられる時間に注目しています。前脚が一本なら、その脚を上げたときに、もう一本の前脚へ支え役を交代できません。ゆっくり進むときも、一本の脚は着地の間隔をあまり長くせずに動く必要があり、二本組とは異なるリズムが生まれると説明しています。

速さに合わせて三本が共通の周期で動いたり、二本と一本が異なる周期で動いたりする。今回の研究は、三本脚の犬が使うこうした移動のパターンを、着地のタイミングから示しました。


体の支え方は、残った脚によって違う

体を支える力にも、前脚を失った場合と後脚を失った場合で違いがありました。前脚を一本失った犬では、残った前脚が大きな役割を担い、後脚を一本失った犬では、力が三本に比較的均等に分かれていました。同じ三本脚でも、どの脚が残っているかによって、体の支え方は変わるのです。

こうした違いが分かれば、獣医師やリハビリテーションに関わる専門家が、その犬の動きを評価するときの手掛かりになります。足運びの見た目に加えて、どの脚を、どのタイミングで、どのように使っているかを考えられるからです。研究チームは、今回の知見が術後のリハビリテーションを理解する基盤になるとしています。

研究者は、脚で歩くロボットの開発にも手掛かりを与えると考えています。ロボットも、一部の脚が使えなくなったときに、残った脚で移動を続ける方法が必要になります。脚を動かす順番やタイミングをどう組み替えるかという課題に、三本脚の犬のデータが役立つ可能性があるのです。身近な犬の動きには、機械の動かし方を考えるヒントも含まれています。

 

その犬に合う暮らしを支えるために

三本脚での暮らしを支えるためには、日々の環境も関わってきます。米国獣医外科専門医協会(ACVS)は、切断手術後の回復期には滑りやすい床や階段への出入りに気を配り、必要に応じて体を支えながら、立つ・歩く動きを段階的に増やすことを案内しています。体重の管理も、残った脚への負担を考えるうえで大切とされています。

散歩の速さや運動量は、回復の段階やその犬の状態に合わせて、担当の獣医師と決めていきます。普段の動きを知っていることは、歩き方や活動の様子に変化があったとき、それを相談する助けにもなります。

ACVSは、脚を失った動物の多くが、回復後には年齢に応じた高い活動性を取り戻すと説明しています。立つ、歩く、外の匂いを確かめる。そうした毎日を支えるために、犬の体の動きと生活環境を一緒に見ていくことが大切です。

三本脚の犬が走る姿には、着地の順番、前後のテンポ、体を支える力の分担があります。その仕組みを知ると、いつもの一歩にも、体の使い方の細やかさが見えてきます。目の前の犬が、どんなリズムで進んでいるのか。その犬の動きを知ることが、気持ちよく過ごせる毎日を考える入り口になりそうです。

 

参考文献

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