犬のにおい嗅ぎは、散歩の楽しみ。ノーズワーク研究から考える「探す時間」

犬のにおい嗅ぎは、散歩の楽しみ。ノーズワーク研究から考える「探す時間」

散歩中、犬が立ち止まって地面のにおいを嗅ぎ始めると、つい「そろそろ行こう」と声をかけたくなります。帰宅時間が決まっている日なら、なおさらです。それでも、犬が鼻を動かしている時間を、散歩の予定に最初から入れてみると、いつもの道の歩き方は少し変わります。

今回は、鼻を使って隠されたものを探す「ノーズワーク」を調べた2019年の研究を紹介し、毎日の散歩や遊びに取り入れる方法を考えます。長く歩いた日にも、近所を一周した日にも、犬が気になった場所を自分で調べる時間を作ってみる。歩数や距離と一緒に、「何を楽しんでいたか」も振り返ってみませんか。

 

1.ノーズワークをした犬に見られた変化

Charlotte DurantonとAlexandra Horowitzは、家庭犬20頭を、におい探しをするグループと、人について歩く練習をするグループに分けました。そして、2週間の活動の前後で、犬の反応が変わるかを調べました。

そのために使ったのが、器の置き場所を覚える実験です。たとえば「右に置いた器には食べ物がある、左に置いた器は空」という経験を繰り返します。犬がその違いを覚えたら、今度は真ん中に器を置きます。犬にとっては、食べ物があるかどうか分からない場所です。

におい探しをしたグループは、2週間後、この真ん中の器へ以前より早く近づくようになりました。研究者は、それを「食べ物があるかもしれない」と期待する、楽観的な判断の表れと考えました。犬の気持ちは行動から推測しています。20頭の実験で見られた変化なので、散歩中のにおい嗅ぎ全般や、性格の変化まで確かめた結果ではありません。

暮らしに取り入れるなら、まずはにおいを探す遊びを一つ増やしてみるところから。実験と同じ変化を求めるより、目の前の犬がその遊びを楽しむかどうかを見ながら試してみましょう。

 

2.散歩の予定に「立ち止まれる場所」を入れる

においを嗅ぐことは、犬が周囲の情報を得る自然な行動です。英国の動物福祉団体Dogs Trustも、散歩でにおいを嗅ぐ機会を設けることや、その犬の好みに合う活動を選ぶことを紹介しています。

実際の散歩では、時間の使い方を少し工夫してみます。たとえば、帰宅まで20分なら、いつも20分かけて歩き切る道よりも、途中で立ち止まる余裕のある短いコースを選ぶ。歩く区間と、犬の様子を見ながらゆっくり過ごす区間を組み合わせれば、毎回「もう時間がない」と急がせる場面を減らせます。

待つ場所は、人や自転車の通行を妨げず、落ちているものも確認できるところへ。犬が頭を上げて動き始めたら、一緒に歩き出します。歩道の狭い場所や交差点では進み、落ち着いて過ごせる場所で時間を取る。街の中でも、場所を選ぶことで実践しやすくなります。

散歩の終わりには、距離と一緒に「どこで足を止めたか」を思い出してみてください。公園の入り口ではよく立ち止まるのに、大通り沿いでは先へ進みたがる。そうした違いが分かると、次はどの道を歩くか選びやすくなります。

 

3.家では、見つけやすい一粒から始める

ここからは、実験とは別に、家で楽しむための簡単な遊びを紹介します。使うのは、普段食べているフードの一部。清潔で片づいた場所に一粒を置き、犬が見つけて食べるところから始めてみます。最初は置く様子が見えていても構いません。

次は、少し離れたところへもう一粒。遊びの流れが分かってきたら、置く場所を一か所ずつ変えてみます。いきなり部屋中に隠さず、まずは狭い範囲で始めます。犬がどこを探し、どこで迷うかも見やすくなります。床の上、家具の手前など、犬が無理な姿勢を取らずに届く位置を使います。

慣れてからの変化も、一度に一つで十分です。前回より少し離す、見つける場所を二か所にするなど、少しずつ変えると、その犬がどのくらいなら見つけられるか分かります。遊びに使った分は食事から取り分けておき、遊んでいる間はそばで見守りましょう。

始める前に数粒を別の小皿へ取り分けておけば、使った量と残った数が分かります。終わったら置き忘れがないか確認して片づける。準備や片づけの手間を少なくすると、忙しい日にも取り入れやすい遊びになります。

 

4.見つける速さより、取り組み方を見る

遊びを始めると、つい「昨日より難しい場所で見つけられるかな」と試したくなります。そんなときは、隠し場所を難しくする前に、犬がどう取り組んでいるかを見てみます。自分から探し始めるのか、置いたあたりへ戻るのか、人の顔を見上げて待つのか。同じ一粒を探す遊びでも、途中の動きには違いが出ます。

犬が探すのをやめたときに、何度も「探して」と繰り返す必要はありません。見つけやすい位置へ戻してみる、範囲を狭めてみる。別のことに気を取られて戻ってこなければ、その日はそこで終わりにします。予定した回数まで続けなくても、「次はもう少し簡単にしよう」と分かれば十分です。

また、人が先回りして隠し場所を指さし続けると、犬が自分で探す様子は見えにくくなります。まずは待ち、見つけられずに困っているようなら、隠し場所を簡単にする。その順番を意識すると、人の側も「教える時間」から「見守る時間」へ切り替えやすくなります。

 

5.その犬が楽しむ時間を、暮らしの中に残す

鼻を使う遊びを取り入れるとき、毎日新しい道具や複雑な仕掛けを用意する必要はありません。今日はいつもの道で少し待つ。別の日には家で数粒のフードを探す。手軽にできることから始めて、犬の反応を見ながら続け方を決めていけばよいのです。

家族で散歩を分担しているなら、「この場所ではよく立ち止まる」「今日はここを通りたがった」と共有してみるのも一案です。同じ犬と歩いていても、時間帯や担当する人によって気づくことは違います。家族の話を聞いて次の散歩でも様子を見てみると、犬の好みが少しずつ分かってくるかもしれません。

歩いた距離は、散歩を振り返る分かりやすい目安です。それに加えて、犬がどこでにおいを嗅ぎ、何に時間をかけていたかも思い出してみる。次の散歩で鼻が地面へ向いたら、周囲を確かめて、少し待ってみてください。その間に犬が何をするのかを見るところから、今日の散歩の楽しみが一つ増えるかもしれません。

 

参考文献

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