ニューヨークで変わる「犬の散歩」という仕事|6人のドッグウォーカーから見る都市と犬

ニューヨークで変わる「犬の散歩」という仕事|6人のドッグウォーカーから見る都市と犬

ニューヨークの街を歩いていると、何頭もの犬を連れて歩く「ドッグウォーカー」の姿を見かけます。

飼い主が仕事などで家を空けている間に犬を散歩させる仕事ですが、2026年8月、Vogueがニューヨークで活動する6人のドッグウォーカーを特集しました。

その内容を見ていくと、彼らの仕事は単なる「散歩代行」ではありません。

地域の人たちと顔を合わせ、犬の性格を把握し、街の変化を見守り、ときにはアートやファッション、コミュニティ活動と結びついています。

ニューヨークという都市では、犬を歩かせる仕事そのものが、街の文化の一部になっているようです。

ニューヨークには推定60万頭の犬

Vogueの記事では、ニューヨーク市には推定約60万頭の犬がいると紹介されています。

高層住宅が多く、共働きの家庭も多いニューヨークでは、飼い主に代わって犬を散歩させるドッグウォーカーは、犬との暮らしを支える重要な存在です。

彼らは毎日同じ地域を歩き、同じ犬を迎えに行きます。

犬の体調や性格だけでなく、街の人たちの顔まで覚えていく。

Vogueは、ドッグウォーカーについて、子どもたちを笑顔にしたり、郵便配達員のためにドアを開けたり、街の様子を見守ったりする存在でもあると紹介しています。

つまり犬の散歩を通じて、自然と地域社会の中に入り込んでいく仕事なのです。

40年以上歩き続ける78歳のドッグウォーカー

特に印象的なのが、Upper West Sideで活動するCostello Caldwellです。

現在78歳で、1980年代初頭から犬を歩かせ続けています。

ニューヨークへ移った後、ファッションや小売、レストランなどで働いていましたが、病気から回復する時期に公園で楽しそうに犬を歩かせている人たちを見たことが、ドッグウォーカーになるきっかけでした。

彼の仕事には、かなり独特なスタイルがあります。

犬のリードや首輪までコーディネートし、飼い主向けの記録を革張りの手帳に残す。本人にとっては、犬の散歩もファッションやアートの延長です。

近所では「このエリアの市長」と呼ばれるほど地域に溶け込んでいるそうです。

犬を歩かせることが、仕事であり、表現であり、地域との接点にもなっています。

犬を歩かせながら、アーティストとして生きる

Vogueに登場する6人の中には、犬の散歩とクリエイティブな仕事を両立している人が何人もいます。

SoHoで犬を歩かせているChristian Ocampoは、ビジュアルアーティストであり、ランナー、モデルでもあります。

ドッグウォーキングという仕事は時間の自由度が比較的高いため、生活費を得ながら創作活動を続けることができます。

Corey Baumerもドッグウォーキングをフルタイムの仕事にしながら、空いた時間に文章を書いたりアートを制作したりしています。

彼女は犬たちをスマートカーに乗せてマンハッタンのドッグパークへ連れていく姿でも知られ、街を歩いていると、多くの人が振り返って笑顔になるそうです。

犬の散歩という仕事が、別の夢を諦めずに暮らすための働き方にもなっています。

1日に15〜25回散歩する人も

Tribecaで活動するSarah Kerrは、忙しい時期には1日15〜25回もの散歩を担当すると話しています。

彼女はペンシルベニア州のアルパカ牧場で育ち、17歳でニューヨークへ移住。動物と関わる仕事を探したことからドッグウォーカーになりました。

現在は犬の散歩に加えて、オンラインコンテンツの制作や犬用アパレルブランドの仕事もしています。

長く同じ地域を歩くうちに、Tribecaの街そのものにも詳しくなり、犬の散歩を通じて通常とは違う角度から街を見るようになったと話しています。

「犬を連れて歩く」という行為が、その人に街を知る新しい視点を与えているのも興味深いところです。

散歩とトレーニングを組み合わせる

Dumboを拠点に活動するShaina Stelzerは、少し違った方法で犬たちを歩かせています。

大学では獣医学進学課程を学び、2011年に自身のドッグウォーキング事業を開始しました。

現在行っているのは、複数の犬をまとめて歩かせながらトレーニングも行う「structured pack walks」です。

さらに彼女はヨガインストラクターでもあり、犬と人の双方に「落ち着くこと」「自分の状態を整えること」という共通点を感じていると語っています。

単に犬を外へ連れ出すのではなく、散歩を犬の行動やコミュニケーションを整える時間として考えているわけです。

ドッグウォーカーが「街の目」になる

BrooklynのProspect Heightsで活動するSpike Einbinderは、14年間ドッグウォーカーを続けています。

本人は犬アレルギーを持っていますが、それでも犬が好きでこの仕事を続けています。

さらに彼は、クィアの協同型ドッグウォーカー集団「The Rainbow Pack」の設立者でもあります。

犬を歩かせるだけでなく、配達物を建物の中へ入れたり、水漏れした消火栓を見つければ市へ連絡したりと、自分自身を地域の「目と耳」として捉えています。

ドッグウォーキングを通じて、コミュニティや人同士のケアについて多くを学んだと話しています。

犬を連れて毎日同じ街を歩くからこそ、普通の人が気づかない小さな変化にも気づく。

それも、この仕事の一部になっています。

「犬の散歩」という仕事が成立する街

日本でも犬の散歩代行サービスはあります。

ただ、ニューヨークのドッグウォーカーを見ていると、それ以上のものを感じます。

犬を歩かせる人が、

地域の顔になる。

犬の行動を理解する専門家になる。

別の創作活動を続けるための働き方になる。

そして街の変化を見守る存在にもなる。

ニューヨークでは、多くの犬が都市の中で暮らしているからこそ、ドッグウォーカーという仕事が街のインフラのような役割を担っています。

犬との暮らしが増えると、新しい仕事が生まれる。

その仕事が続くことで、さらに犬と暮らしやすい街が作られていく。

Vogueが6人のドッグウォーカーを「Dogue」というカルチャー企画で取り上げたこと自体、犬の散歩が単なるペットサービスではなく、都市文化のひとつとして見られ始めていることを象徴しているように思います。

Brott JOURNALではこれからも、世界の街で犬との暮らしを支えている人や仕事にも注目していきます。

 

参考文献・出典

Vogue
“The Leaders of the Pack: Meet Six New York Dog Walkers”
August 18, 2026
https://www.vogue.com/article/dog-walkers-dogue-2026

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