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愛犬と同じベッドで眠っている人は少なくありません。
冬は暖かい。寝る前に犬の寝息を聞くと落ち着く。朝起きたとき、すぐ隣に愛犬がいるのもうれしい。
一方で、
「犬と一緒に寝ると睡眠が浅くなるのでは?」
と気になる人もいると思います。
このテーマについては、人間側の睡眠だけでなく、最近では犬側の睡眠まで実際に測定した研究が出ています。
これまでの研究を並べると、少し面白い構図が見えてきます。
人間は、犬とベッドを共有すると睡眠が細かく乱れやすい。
犬は、飼い主がそばにいるとむしろ安心して深く眠れる可能性がある。
犬と一緒に寝ることは、人と犬に同じ影響を与えているわけではないようです。
2017年、Mayo Clinicの研究チームは、健康な成人40人とその犬を7夜にわたって調べました。
人と犬の双方に活動量計を装着し、夜間の動きを客観的に測定しています。
人間の平均睡眠効率は81%で、犬が寝室にいる状態でも比較的良好な睡眠が保たれていました。
ただし、犬のいる場所によって差がありました。
犬が寝室にいるだけの場合より、犬が実際にベッドの上で寝ている場合の方が、人間の睡眠効率は低下していました。
つまり、
「犬と同じ部屋で寝る」
ことと、
「犬と同じ布団・ベッドで寝る」
ことは、睡眠への影響が同じではありません。
愛犬の気配を感じながら眠りたいけれど、自分の睡眠もしっかり確保したい人にとっては、犬用ベッドを人のベッドの横に置くという方法にも理屈があります。
2020年には、さらに細かい研究が行われています。
対象になったのは、普段から犬とベッドを共有している12人の女性とその犬。
平均約10夜、合計124夜分の動きを1分単位で分析しました。
すると、人と犬の動きには明確な関係がありました。
犬が動いていると、人間が「動いていない状態」から「動いている状態」へ変わる確率は約3倍になりました。
また、人間が動いていた時間の約半分では、犬も同時に動いていました。
犬が寝返りを打つ。
場所を変える。
水を飲みに行く。
またベッドに戻ってくる。
人間は完全に目を覚ましていなくても、その動きにつられて身体を動かしている可能性があります。
この研究でさらに面白いのは、飼い主自身の感覚です。
客観的には犬の動きと人間の動きが連動していたにもかかわらず、飼い主が「犬に起こされた」と記録したのは124夜中22夜だけでした。
しかも、そのうち6夜は1人の参加者によるものです。
つまり、
本人は「ぐっすり眠れた」と感じていても、実際には犬の動きに合わせて細かな睡眠の中断が起きている
ことがあります。
これが、犬との添い寝研究でよく見られる面白いズレです。
飼い主の主観では、
「犬と寝ると落ち着く」
「よく眠れる」
と感じる人が多い。
でも活動量計などで測ると、少し睡眠が乱れていることがあります。
2024年には、アメリカ成人1,591人を対象にした、より大きな研究も発表されました。
そのうち758人、約48%がペットと一緒に寝ていました。
分析すると、ペットと一緒に寝ている人では、
という関連が見つかりました。
特に犬との添い寝では、睡眠の質、睡眠効率、不眠症状との関連が確認されています。
一方で興味深いのは、添い寝している人の多くが、ペットが睡眠に与える影響を「良い」「とても良い」と感じていたことです。
客観的・統計的な睡眠と、飼い主が感じる安心感は必ずしも同じではない。
この点は、過去の研究とも共通しています。
2025年には、子どもとペットの睡眠についても研究が出ています。
175家庭の子どもを2週間活動量計で調べ、
の3グループを比較しました。
その結果、ペットと同じベッドで寝ている子どもでは、睡眠時間が短く、睡眠効率が低く、寝つくまでの時間も長い傾向が確認されました。
ここでも、「寝室にいること」と「ベッドを共有すること」を分けて考える必要がありそうです。
ここからが面白いところです。
これまでの研究は、ほとんどが
「犬が人間の睡眠を邪魔するか」
という人間側からの視点でした。
でも2025年、犬自身の睡眠を非侵襲のポリソムノグラフィーで測定した研究が発表されました。
参加した家庭犬は9頭。
犬たちは慣れない実験環境で、
飼い主と一緒にいる状態
と、
親切ではあるものの知らない人と一緒にいる状態
の両方で眠りました。
すると飼い主がいるときには、
という違いが確認されました。
犬にとって飼い主の存在が、眠るための「安心材料」になっている可能性があります。
犬と飼い主の関係には、人間の乳幼児と親の関係に似た愛着行動があることが知られています。
知らない場所でも飼い主がいる。
聞き慣れた呼吸音がする。
知っている匂いがする。
何かあれば飼い主がいる。
そうした状態が、犬にとって安心して眠る条件になっているのかもしれません。
今回の犬側の研究は9頭と小規模ですが、犬の睡眠を実際に脳波まで測定した点が重要です。
ただ「犬も飼い主の横が好きそう」という印象だけではなく、飼い主の存在によって睡眠構造そのものが変わったことが示されています。
ここまでの研究をまとめると、少し不思議な関係が見えてきます。
人間側から見ると、
犬がベッド上で動くことで、睡眠が細かく乱れる可能性がある。
犬側から見ると、
飼い主がそばにいることで、安心して眠りやすくなる可能性がある。
つまり、人と犬の添い寝は、
「良い・悪い」
だけでは簡単に決められません。
睡眠だけを見るなら、犬はベッドの外にいた方が人には有利かもしれません。
でも、
安心感。
一緒に寝る楽しさ。
犬との距離感。
こうしたものも、人が犬と暮らす理由の一部です。
研究結果だけから考えるなら、ひとつの落としどころがあります。
同じ寝室にいるけれど、寝る場所は別。
人のベッドの横に犬用ベッドを置く。
犬は飼い主の気配を感じられる。
人は犬の寝返りによる振動を直接受けにくい。
2017年のMayo Clinic研究でも、「寝室に犬がいる」こと自体では良好な睡眠効率が維持され、違いが目立ったのは犬がベッド上にいる場合でした。
もちろん、すべての家庭でこれが正解というわけではありません。
まったく動かず朝まで寝る犬もいます。
夜中に何度も場所を変える犬もいます。
小型犬と大型犬ではベッドへの影響も違います。
飼い主自身の睡眠の深さにも個人差があります。
だからこそ、
自分と愛犬の睡眠を一緒に考える
ことが大切なのだと思います。
「犬と寝るのは良いか悪いか」ではなく、
人も犬も気持ちよく眠れる場所はどこか。
研究を見ると、その問いの方が犬との暮らしには合っていそうです。
Patel SI, Miller BW, Kosiorek HE, et al.
“The Effect of Dogs on Human Sleep in the Home Sleep Environment.”
Mayo Clinic Proceedings, 2017.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28870354/
Hoffman CL, Browne M, Smith BP.
“Human-Animal Co-Sleeping: An Actigraphy-Based Assessment of Dogs’ Impacts on Women’s Nighttime Movements.”
Animals, 2020.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7070703/
Chin BN, Singh T, Carothers AS.
“Co-sleeping with pets, stress, and sleep in a nationally-representative sample of United States adults.”
Scientific Reports, 2024.
https://www.nature.com/articles/s41598-024-56055-9
“Family Dogs’ Sleep Macrostructure Reflects Worsened Sleep Quality When Sleeping in the Absence of Their Owners.”
2025.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12608857/
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