「柴犬だから」「レトリーバーだから」犬の性格は犬種でどこまで決まる?

「柴犬だから」「レトリーバーだから」犬の性格は犬種でどこまで決まる?

「ゴールデンレトリーバーは人懐っこい」

「柴犬はマイペース」

「ボーダーコリーは賢くて仕事好き」

犬について話していると、こんな「犬種あるある」がよく出てきます。

実際、犬は長い年月をかけて、狩猟、牧羊、警備、回収など、それぞれ異なる仕事に向く特徴を選びながら繁殖されてきました。

そのため、犬種によって行動に違いがあること自体は不思議ではありません。

では、目の前にいる犬の性格まで、犬種から予想できるのでしょうか。

2026年8月に発表された研究では、異なる犬種の犬たちに同じ行動テストを行い、

  • 曖昧な状況をポジティブ・ネガティブのどちらに判断するか
  • 人間をどれくらい長く見るか
  • 目の前の誘惑をどれくらい我慢できるか

という3つの特徴を比較しました。

すると、犬種による違いが見られた部分と、犬種より一頭一頭の違いの方が大きかった部分の両方がありました。

 

犬にも「楽観的」「悲観的」はある?

研究で行われたひとつ目のテストが、認知バイアステストです。

犬に、

「この場所にはごほうびがある」

「この場所にはごほうびがない」

という2つの位置を覚えてもらいます。

その後、そのちょうど中間など、犬にとって結果が分からない曖昧な場所に容器を置きます。

犬がそこへすぐ近づけば、

「もしかしたらごほうびがあるかも」

と期待している可能性が高い。

逆に慎重に近づけば、

「たぶん何もない」

と予想している可能性があります。

人間でいう「コップに水が半分も入っている」と見るか、「半分しかない」と見るかに少し似ています。

こうしたテストは、犬の感情状態を研究する方法として使われています。

今回、この曖昧な状況への反応については、犬種による明確な違いより個体差が大きい結果になりました。

つまり、

「この犬種は楽観的」

「この犬種は悲観的」

と簡単には分けられません。

同じ犬種でも、「行ってみよう!」とすぐ動く犬もいれば、「ちょっと待とう」と慎重に考える犬がいるわけです。

 

人間を見る時間には犬種差があった

一方、犬種による違いが見えた項目もあります。

そのひとつが、人間を見つめる行動です。

研究では、レトリーバー系の犬が人間を見る時間が比較的長い傾向が確認されました。

これは犬種が作られてきた歴史を考えると、興味深い結果です。

レトリーバーは、撃ち落とされた鳥などを探して人のもとへ持ち帰る仕事をしてきました。

人の指示を見る。

人がどこを指しているか確認する。

獲物を持って人のところへ戻る。

つまり、人間と連携する能力が仕事の中で重要でした。

そうした選択繁殖の歴史が、現在の家庭犬にもある程度残っている可能性があります。

 

「賢い犬種=我慢できる犬」でもない

研究ではもうひとつ、犬の抑制制御も調べました。

簡単にいうと、

欲しいものが目の前にあっても、すぐ飛びつかずに別の行動を選べるか

を見るテストです。

犬の「賢さ」を語るとき、よくランキングが作られます。

でも犬の認知能力には、

記憶する。

人を見る。

匂いを探す。

問題を解く。

衝動を抑える。

など、いろいろな能力があります。

今回の研究でも、すべての能力が犬種ごとに同じような順位になるわけではありませんでした。

「この犬種は頭がいいから何でも得意」というほど、犬の認知は単純ではないのです。

 

そもそも犬種差はどのくらいある?

このテーマでは、2022年に『Science』へ掲載された大規模研究も参考になります。

研究では2,155頭の犬のゲノムを解析し、18,385頭の飼い主から行動データを集めました。

その結果、犬種は一部の行動特性とは関連していましたが、個々の犬の行動差の多くを犬種だけでは説明できませんでした。

研究では、犬種が説明できる個体間の行動差は約9%と推定されています。

これは、

「犬種なんてまったく関係ない」

という意味でもありません。

むしろ、

犬種はヒントになる。でも答えではない。

くらいに考えるのが近そうです。

 

「○○犬だから・・」で終わらせると、見えなくなるもの

犬種による傾向を知っておくことには意味があります。

牧羊犬なら動くものを追いやすい。

レトリーバーなら物をくわえて運ぶことを好みやすい。

テリアなら小動物への反応が強いことがある。

こうした犬種特性は、散歩、遊び、トレーニングを考えるうえで参考になります。

でも、

「柴犬だから頑固」

「チワワだから怖がり」

「ゴールデンだから誰にでも優しい」

と決めてしまうと、その犬自身を見る機会を失ってしまいます。

例えば、知らない人を怖がるゴールデンレトリーバーもいます。

慎重なボーダーコリーもいます。

人間とべったり過ごしたい柴犬もいます。

犬種としての傾向と、その犬自身の性格は別に考えた方がよさそうです。

 

性格を作るのは犬種だけではない

一頭の犬の行動には、遺伝だけでなくさまざまな要素が影響します。

生まれてからどんな環境で育ったか。

子犬の時期にどんな人や犬に会ったか。

どんな経験をしたか。

飼い主とどんな生活をしているか。

年齢。

健康状態。

そして、その犬自身の個性。

こうしたものが重なって、現在の行動が作られています。

だから同じ母犬から生まれた兄弟でも、性格がまったく同じになるわけではありません。

 

犬種は「取扱説明書」ではなく「ヒント」

犬を迎えるときに犬種特性を調べることは、とても大切です。

運動量が多いのか。

人との共同作業を好みやすいのか。

何かを追う性質が強いのか。

警戒しやすいのか。

そうした特徴を知っておけば、犬に合った生活を準備できます。

でも、それをそのまま目の前の犬へ当てはめる必要はありません。

犬種を見てから犬を見るのではなく、

犬種を知ったうえで、その犬を見る。

今回の研究から見えてくるのは、そのくらいの距離感です。

「ゴールデンだからこう」

「柴犬だからこう」

ではなく、

「この犬はどうなんだろう?」

と観察してみる。

同じ犬種でも、一頭ずつ違うからこそ、犬と暮らすことは面白いのだと思います。

 

参考文献

2026年 犬種間の認知バイアス・注視・抑制制御に関する比較研究
PubMedで論文情報を見る

Morrill K, et al.
“Ancestry-inclusive dog genomics challenges popular breed stereotypes.”
Science, 2022.
Science掲載論文

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